京都の夏はやはり暑かった。
祇園祭の直前に間に合わせるかのように梅雨明けした関西地方。
「これは酷暑を覚悟しなければ」と思いながらの観戦でした。
昨年、祇園祭の始まりの儀式「注連縄切り(しめなわぎり)」を間近で観てから、今年もぜひ違うアングルから。
長刀鉾に乗り込む稚児
注連縄切りの行われる地点に向かうときに思いがけず、遭遇した場面に感動!
烏丸御池交差点で、生稚児が長刀鉾に乗り込む場面をこれまた間近で観ることができたのです!
強力に担がれた稚児が乗り込むまでに、先に囃子方(囃子方)の方たちが乗り込むのですが、その数の多さにまず驚きました。
おそらく30人弱くらい乗り込んだのではないでしょうか。あの狭い空間にこれだけ乗り込んでいるとは・・・密も密、蒸し暑さは尋常ではないでしょうね。
強力を務める男性は、そんなに大柄な方ではなく中肉中背の方、といった感じ。しかし、小学校高学年の男の子を担ぐとなれば、それだけの怪力をお持ちの方のはず。この日のために筋トレなどいろいろ鍛えておられるにちがいありません。
丁寧に丁寧に一歩ずつ階段を登っていく強力さん。
階段の中ほどまで来ると、180度振り返ってその雄姿を披露してくださいました。
稚児も、バランスとって上手に担がれていますね。いい姿勢!
巡行が終わって、鉾から降りる時も、またこうして担がれて降りるようです。
祇園祭前祭の巡行は、毎年長刀鉾が先頭と決まっており、その出発の前にこういう儀式もあったのですね。
この瞬間を見届けた観客は、次の見どころに移動していきます。
長刀鉾の注連縄切り
次の見どころは、昨年も間近で見ることができた「注連縄切り」。
四条麩屋町あたりに張られた注連縄を刀で切り落とすことによって、祇園祭の巡行がスタートします。
今年は、昨年とは反対側の歩道から見ることができましたが、アングルがかなり鉾の真下・・・
稚児の顔は白い御幣(ごへい)の間からちらちらと見えるくらいでしたが、刀の先ははっきりと見えました。
注連縄に刀を入れるまで、稚児は剣舞をするのですが、今回は特にその動きが例年とは違うのを感じました。
稚児の後ろでは、「稚児係」と呼ばれるベテランの裏方さんが、二人羽織のように稚児の舞をサポートしているのですが、係の方が変わったのでしょうか?
刀で空を切り返すときのキレがハンパなく、今回は静と動のメリハリのついた注連縄切りでした。
非常にカッコよかったです!
近くで見るとわかりますが、切った瞬間に注連縄がパラリと下に落ちるように、鉾から差し出された長いカマのようなものが注連縄にひっかけてあります。
刀を垂直に縄に入れなければならず、そして振り落とす力もいるので、大人の稚児係と稚児との息が合わないとできない非常に緊張するであろうこの「注連縄切り」。
稚児にはどんな四条通りの風景が見えているのでしょうね。
さて、注連縄切りで巡行の始まりです。
各山鉾の先頭にに乗っている2人の「音頭取り」が、体を思い切り前のめりにして、扇子を前に差し出します。
この音頭の取り方も、各鉾によって違っていて、やはり、音頭をとる声が大きくて、2人の扇子の動かし方がピッタリ合っていたりすると、さらに鉾が美しく見えてくるから不思議です。
勇壮な辻回し
さて、観客は次の見どころ、山鉾が90度向きを変える「辻回し」を見るために、バラバラと移動していきます。
毎年、ニュースで取り上げられるおなじみの四条河原町の交差点。
観客が多すぎて、本当に身動きが取れません。
外国人の方も明らかに増えています。
「辻回し」はとても時間をかけて行われます。
路面に竹を敷き詰める→水を撒く→鉾の車輪を上に乗せる→竹の敷き詰めを調整する→綱をもって引っ張る人(曳手)を統制する→水を撒く→竹の調整をする・・・
など、とても入念に行われます。
山鉾の重量は一番重いもの(月鉾)で10トン以上あり、車輪は前後にしか動かないので、横に滑らせて方向転換するしかない、というわけです。
今回、2番目に巡行を行った「函谷鉾(かんこほこ)」の辻回しにかける時間がいちばん長かったように感じました。
辻回しの指揮を執るリーダーのような人がすごく慎重な方で、竹の敷き詰め方にこだわりがあるのだろうか、とか、もともとその鉾の手順が昔からそうなのか、いろんなことを想像してしまいます。
音頭取の合図とともに、鉾が角度を変える時の「バリバリバリ!!」という音、その後の観客の「おおーーーーっ!!」という歓声。
辻回しの醍醐味です。
辻回しをする必要のない身軽な鉾は、90度方向転換して終わる鉾や、頑張って3回転して、観客を喜ばせてくれる鉾もあったりします。
水分補給の謎
ここまでの炎天下で、3時間もの巡行を行うとなると、巡行に携わる方たちの水分補給はいつしてるのか、気になります。
山鉾の後ろについて運んでいる唐櫃(からびつ)のようなものにペットボトルが積まれていたのは見えましたが、巡行している方たちがそれを飲んでいるところを目撃したことがないのが、不思議です。
鉾にぎゅうぎゅう詰めに乗り込んで、常にコンチキチンの演奏をし続ける囃子方(はやしかた)の方たちも、いったいいつ水分補給しているのでしょう。
直射日光を浴びまくっている、屋根に乗っている屋根方(やねかた)さんも、いちばん熱中症になるのを避けなければならない方たちだと思うのですが、水分の入ったペットボトルとか、隠しておけそうな場所はあの屋根にはありそうにないと思うのですが、水分補給はいったいどうしているのでしょう。
なにか、水分補給する時のおきてみたいなものがあるのでしょうか。
長刀鉾に乗っている稚児が水分補給をするときは、その姿を周囲の大人が扇子で覆い隠す動画を見たことがあります。
奥ゆかしい・・・
ふと、東京ディズニーランドのパレードを思い出しました。
そうか!山鉾巡行に参加している人はみんな、祇園祭のキャストなのだ!ゲストを楽しませることができなければ、それはキャストではない!
祇園祭の「あるある」
観客は、辻回しの瞬間を待っている間は、ただ待っているしかないので、隣の見知らぬ人とついつい話し始めてしまい、お友達になってしまうことがあります。中には、祇園祭にやたら詳しい方が必ずいて、祇園祭のレクチャーをしてくれることが多いのです。
観客は密集状態なので、隣の人が話している話が否が応でも耳に入ってきます。
その「祇園祭おじさん・おばさん」の話を、「へえ~、なるほどー」と、周囲5人くらいは思っているはずです。
親子連れなど、子どもが素朴な疑問を口にしたりすると、その周辺にも必ず「祇園祭おじさん・おばさん」はなぜか存在していて、丁寧に教えてくれたりします。
「次はどの鉾が来るのかなー?」と思っていても、ガイドブックを持っている人が、「次は、○○が来るね」など話しているのもすぐ聞こえるので、とても便利です。
外国人向けに英語でガイドしてくれるボランティアみたいな方がいたら、すごく重宝するだろうなあ、なんてことも思ったり。
今回特に感じたのは、外国人、特に中国系の方でしょうか、待ってる間でも、延々とずーっとしゃべり続ける人が多いな、ということでした。それも大声で、笑い声も豪快。辻回しの時のリアクションも大きくて。
祇園祭が本格的に戻ってきました!
さあ、これから京都の夏は本番です。